データ分析とインテリジェンス

具体的な問題と、その問題に対してどのような分析が使えるかを簡潔に示したという点では価値のある書籍・・・書評・感想『新米探偵、データ分析に挑む』

■具体的な問題解決にデータ分析が使える、というスタンスはとても重要

『とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)』著者の新刊ということで、今度は探偵事務所が舞台。探偵事務所という設定から予想できるように、様々な人が様々な問題を持ち込んできてそれに対してデータ分析を行う(解決まではいかないのが物足りないのは後述)という小説仕立てのデータ分析本。

データ分析の本と言うと、理論書や学術的問題への応用がメインではたからみると何をしているのかも、どのような利益があるのかもさっぱりわからない専門家向けと、数式の1つも出てこないデータ分析と言う名の「グラフの書き方講座」みたいなド素人向けと両極端に分かれる中、具体的な問題と、その問題に対してどのような分析が使えるかを簡潔に示したという点では価値のある書籍。一番需要がありそうなのに一番書かれないという不思議な状況に一石を投じることになるかもしれない。

とはいえこの本を即実務に応用できるのかというとこれも後述するようにいろいろ足りないこともあり、学生や社会人になったばかりの人がデータ分析が何をしているかの雰囲気を掴むために使うというのが妥当なところだろうか。

■実務から考えると物足りない点

問題とデータがあってそこから考える、というのはたしかに現実的には大いにあり得る話ではあるのだが、例えば

  • ・情報収集の大切さと難しさ
  • ・分析の結果から何が言えて、それからどうするべきかの提案までの必要性
  • ・話を聞いてくれない、聞いても実行に移してくれない人への対策

といったような実務で必要な話にも触れて欲しかった。このあたりが抜け落ちると、問題を考えられない、データがないと何もできない、分析はするけれども提案がない、という「使えないデータ分析」になってしまう。そこまで行くと文章量が増えすぎるかもしれないが、テーマを絞ることでもう少し深く追うこともできるだろう。そしてある意味では一番重要な社内政治活動というテーマもあるが、さすがにそこまで踏み込むのは重すぎか。

■統計手法ではなく「何ができるか」をタイトルにした方がよい

内容の話ではないのだがちょっと気になった点について。タイトルに「正規分布」「検定」「相関」といった統計用語が多くみられるが、慣れていない人にはこれだけで遠ざける理由になってしまう。例えば02-09は「平均値の差の検定をする」ではなく「平均に違いがあるのかを統計的に確かめる」といったように、手法ではなく何ができるかを書いた方が同じ内容でもとっつきやすいのでは。

■価格に見合っただけの内容があるかというと微妙

2,000円あれば古本で長い間使える本格的な書籍が手に入るのに、小説とR関連の部分を除けば200ページに満たない分量になってしまうことを考えると、個人的には応援のためには買ってもいいが他の人にお勧めするのはちょっと厳しい価格設定。文庫とかでもっと気軽に買える方が、主な読者層と思われる若手や学生には届きやすいかとは思うのだが、そうもいかないのだろうか。

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タグ:書評・感想


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