データ分析とインテリジェンス

書評・感想『NHKスペシャル 盗まれた最高機密―原爆・スパイ戦の真実』・・・雑多ではあるけれども情報戦・インテリジェンスの入口に

■TV版との違いについては視聴してから

著者はNHKで番組制作に関わっているようで、2014年にインテリジェンス1941―日米開戦への道 知られざる国際情報戦を発表しており、それに続いて第二次大戦中の情報戦がテーマの書籍である。

同じテーマでのTV番組であるNHKスペシャル「盗まれた最高機密」が元になっているとあとがきにあるが、これを書いている時点ではまだ放送されていないため、TV版との違いについては視聴する機会があったら追記することにする。

■主なテーマはALSOS(アルソス)

タイトルには「盗まれた最高機密」とあるが、「誰が」「何を」盗んだのかが良くわからない。読む前はタイトルからしてソ連の原爆スパイの話かと思っていたら、主なテーマはアメリカの諜報・工作機関であるALSOS(アルソス)であり、特にその一員であるロバート・ファーマン少佐の活動が中心である。原爆スパイの話題もあるにはあるが、タイトルにするほどの記述ではない。ちなみにイギリスもマンハッタン計画の話題で出てくるがあまり存在感はない(リューカンの重水工場爆破ではSOEは名前すら出てこない)。

さて、そのALSOSについてであるが、ドイツによる原爆開発を阻止するべくノルマンディー上陸作戦後に最前線に出て科学者を追跡したり、時にはドイツの原爆開発に関わる科学者ハイゼンベルクの暗殺を企画したり、あるいはナチスが隠したウランを強奪したりという活動が紹介されている。またその他の話題として原爆に関わる科学者、日本の原爆研究もあるが、一般向けにあれもこれもと入れ込もうとした結果雑多になってしまった感はある。

ALSOSの話題に興味があるならば、第一章、第五章~第八章あたりを読めばひとまずは十分だろうか。日本語で読める書籍でALSOSについてある程度まとまった記載があるのは本書以外には原子爆弾 1938~1950年情報と謀略(上)ぐらいしか見た記憶がないのだが、他にあったら是非教えていただければ。

■この本に書かれているのはほんの一部

一般向けの番組が元なので、ある程度詳しい人には物足りないだろうが、日本人による諜報・インテリジェンスの書籍自体がほとんど存在しない中で一般向けに解り易く書かれた本書や「インテリジェンス1941―日米開戦への道 知られざる国際情報戦」は実に貴重であるため、是非今後も活動を続けていただきたい。

一方で、この本に書かれていることは第二次大戦における諜報・工作活動のほんの一部をしかもダイジェストで紹介しているにすぎない。原爆スパイ1つをとっても多くの書籍が出版されており、一部(それでもそれなりの数)の書籍は邦訳されているので、書店やamazonなどで探してみることをお勧めする。そのついでに、洋書でもどのような書籍があるかタイトルだけでも見てみると良いだろう。情報・インテリジェンス・データ分析に対する意識や情報量のあまりの違いに愕然となることは間違いない。

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タグ:書評・感想


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