データ分析とインテリジェンス

データ分析失敗の原因

■こうしてデータ分析は失敗する

以前データサイエンティストやアナリストの立場から、データサイエンティストがやる気をなくす言葉集を書いたが、今回はデータ分析プロジェクトが失敗したり、チームを作ったが機能しないと悩んでいる経営者・マネージャー向けに、「どうしたらデータ分析のプロジェクトや組織は失敗するのか」を示す。改善するにはその逆をすればよいが、それを実行に結びつけるのは口にするだけよりも遥かに難しい。しかし、それを乗り越えてこそデータ分析が本当の力となるのである。

■データ分析失敗の原因1:正確な悪い情報よりも、でたらめな良い情報を評価する

誰しもが重要だと知っていながら最も実行とは遠いのが、「悪い情報を積極的に聞くこと」であろう。悪い情報を聞いても聞こえないふりをするぐらいならまだましだが、怒り出したり責任転嫁しようとしたりと醜態をさらす人は多い。その情報はあっという間に社内に広まり、全ての信用は失われ、二度と正確な情報が上がってくることはない。「悪い情報はすぐにでも上げるように」と口ではいいながらいざその時になったら豹変などすれば、なおさら悪い。

イエスマンに囲まれて気が付かないうちに業績は悪化、最後は中国の古典『史記』に見る情報の失敗(1)で紹介したように、「わたくしは注進しなかったからこそ命があったのです」などと言われてそれでおしまいだ。そもそも分析の目的は意思決定と行動の質の向上であるのに、その分析がねじ曲がっているのであれば役に立たないどころか害悪である。しかしそうなるように積極的に仕向けているのは、たいていの場合経営者・マネージャー側である。

悪い情報を積極的に聞くことで名君と呼ばれた唐の太宗の言行録『貞観政要』は最近ちくま学芸文庫から抄訳が出ているので、手に取ってみることをお勧めする。

■データ分析失敗の原因2:都合のいい情報の作成を要求する

社外に発表するニュースリリース、営業のための過去の導入実績、今後の戦略のために競合分析や顧客の反応を収集するなどデータ分析の出番は多岐に渡るが、この時自社のためだけに都合の良い情報を作り出すように依頼や指示が来ることがある。というか、客観的視点の分析が要求されることの方が遥かに少ない。

つまりは分析といいつつ実態はごまかしとつまみ食いで構成されている作文であり、そこに本来あるべき洞察は必要ない。経営者・マネージャーからの指示であれば断るのは現実的には厳しいためやむを得ず作業を行ったとしても、人心は離れていく。目先の利益に目がくらんで捏造や改竄したところでいずれ嘘はばれるし、何より士気が低下して有能な人材は離反する。残るのは、客観的情報よりも評価される情報を出すことにためらいのないモラルの低い人と、転職できない能力の低い人だけになる。

何よりも正確で客観的な分析を要求しなければならない。それをする気がないのならば、データ分析を競争力にするなどと口にしないことだ。

■データ分析失敗の原因3:目立たないデータ分析よりも、目立つ企画や営業だけが得をする

目立つかどうかは役割の違いがあるが、その違いが評価に直結するのは問題だ。目立つ作戦だけが大きな顔をして、目立たない情報や兵站をないがしろにした結果どうなったかは先の戦争を見ればよくわかる。しかしそれを学ばずに来た日本企業は、同じ過ちをまた繰り返している。

必要なのは「君たちも目立たないけれども重要だと思っている」などという言葉ではなく報酬であり、出世である。それを金の亡者のたわごとなどと思うのであれば、データ分析だけでなく経営からも去るべきだろう。

■データ分析失敗の原因4:使えるかより、難しそうかで選ぶ

今なら「ディープラーニングを使え」「人工知能でなんかやれ」などとどこかで聞きかじってきた流行の言葉を現場を混乱させる、という話はどこでもある話。それが有用であると信念を持てるだけの裏付けがあるならばよいが、どこかの有名な新聞や雑誌に書いてあった以上の知識を持っている人はまずいない。

誰も言わないから本人は気づいていないだろうし、気づいているならばそのような発言はしないだろうが、その愚かさを蔑まれていることを経営者・マネージャーは知っておいた方がいい。問題を解決するに当たりその手法がふさわしいかを考えていない時点ですでに話にならないが、さらにその内容が空虚ではどうしようもない。

■必要とされていると感じれば人は動く

結局のところは何が評価されて、何が評価されないかである。自分ではそんなつもりはないかもしれないが、外からはよく見えており、言葉ではなく評価されることに合わせて動く。

評価されるかどうかではなく、経営者の耳に入れるのが役目だろうと言うのは正論であるが、自分が替わりにその立場になった時に同じことができるかどうか考えてみればいい。出世に響くかもしれない、昇給ができなくなるかもしれない、もしかしたらクビになるかもしれず家族の生活が脅かされるかもしれないというプレッシャーの中で正論を吐き続けることを他人に要求することなどできないし、要求するのはあまりに身勝手であろう。だからこそ、昔から命を懸けて諫言する家臣は貴重であるのだが、それ以上に経営者側が情報を上げられるようにする仕組みや評価が重要なのである。

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タグ:経営者・マネージャー向け データ分析 失敗


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