データ分析とインテリジェンス

「人工知能でいい感じの成果を出してくれ」にどう向き合うか

■えらい人をこき下ろすのは楽しい。しかし、何も生み出さない

つい先日、「人工知能でいい感じの成果を出してくれ」という偉い人の脳内はどうなっているのかという記事が話題になっており、読みながらうなづいたり爆笑したりしていた内の1人であるのだが、同時にふと「こうしてデータサイエンティストやデータアナリストといった専門家と呼ばれる人達が馬鹿にするだけだから、営業やコンサルタントがツールやシステムを売ってもうけることができたりするんだろうな。」なんてことも考えていた。

もちろん、記事を鵜呑みにしたり誰かの話を真に受けて、それをそのままやれなどという方が悪いのであるが、だからといってそこでまともに話し合いもしないのでは何も解決しないし誰にとっても得にならない。では、どうしたらよいのだろう。

■えらい人の大多数は本気で言っているわけではないのではないか

記事を読んだりセミナーあたりで聞いてきた話を自社に持ち込む際、せいぜいが「こんな話があったからうちでもできないかな。」ぐらいの雑談や観測気球であって、本気でそれに取り組もうなどと思っている人は経験上ほとんどいない。何かの雑誌の記事を読んで「人工知能すげぇ」と部内に言いまわっている人もいたりするが、さすがにそこまで極端なのは少数派だ。

そんな時には冷静に「そんな難しいことをする前にもっと早くて簡単で効果のある方法がある」と伝えて実践するいい機会であると捉えればよいし、それでもまだこだわりを見せるのであれば実際に導入するにも人やお金についてどう考えているのか、とこちらも逆に聞いてみればよい。

このあたりの簡単なコミュニケーションをすっ飛ばして「あいつは何も知らないから。」と現場のちょっと詳しい人達が内輪でつるし上げるなんてことをしているから何も解決しないどころか相互不信が高まるだけなのに。

■えらい人にとって人工知能は数多くある活動の1つでしかない

現場の専門家とは違い、経営者やマネージャーとなれば現場の専門家とは違い仕事の内容は幅広く、1つの仕事だけに構っているわけにはいかない。なので個別のテーマにはどうしても詳しくなくなるし、話題になっているテーマに偏りがちになるのはある程度はやむを得ない(そればかりでは困るが)。だからこそ現場から専門家の知見やスキルを提供することが必要なのだ。

と考えると、相手がちょっとずれたりしたことを言ったところであまり目くじらを立てずに話を聞いてあげれば良い。数日もすれば大抵は忘れている。

■自分が逆の立場であったらどうだろうか考える

逆の立場といっても自分が営業であちらがアナリストだったら、という話には意味が無いので、自分がまったく疎い分野、例えばアナリストであれば営業や経理、あるいはファッションや料理など雑談でもよいが、ふとどこかで見かけた記事の話を軽く出したとしよう。実はそんな話はちょっとでもその分野に関わっていれば誰でも知っている話なので(分析であれば正規分布とかどうか)誰も話題にはしないのだが発言している当人はまったく詳しくないのでそのことを知らない。その時に「こいつ馬鹿だな、そんなことも知らないのか」という態度を取られたら、どう思うか。

あらかさまに言われなくとも態度にはでるもので、それは必ず相手に伝わる。そのような経験をしたことがない人はまれだろう。人工知能や機械学習においてデータサイエンティストやデータアナリストが加害者となっているのをネットでもリアルでもよく見かけるのであるが、行き着く先は例外なくただ1つ、自分達の首を絞めることになるだけだ。

■こんな会話ができたら前向きに話ができるのではないか

記事では最後に「小学生でも分かるまとめ」として次のようなやりとりが例として挙げられている。

  • 日経○聞「割り算はいいぞ!割合とか分かるぞ」
  • 社長「割り算はいいぞ!やれ、今すぐやれ!」
  • 現場「社長、弊社の社員は足し算はできますが、引き算ができるのは約半数、掛け算に至っては5%の社員ができるかどうかなんです、この状態で割り算を弊社に導入しても意味がありません」
  • 社長「つまり、それは無理ということか?」
  • 現場「はい、今の状況では難しいかと。リーダーである私も、実は七の段が怪しく……」
  • このあたりまではたしかに現実にもよくある話だ。しかしこれに続く社長の言葉は少々現実感に欠けている気がする。

    社長「『無理』というのはですね、嘘吐きの言葉なんです。途中で止めてしまうから無理になるんですよ」

    もし本当にこんなことを言われるなら話のしようもないのでその会社からさっさと逃げた方がいいが、もうちょっと現実に近そうなシチュエーションを考えて、こんな会話にもっていけないだろうか。

    • 現場「このまま割り算の導入を進めることはできますが、基礎ができていない段階で難しいことをしようとしてもうまくいきません。」
    • 現場「サッカーを始めたばかりでろくにボールも蹴られないのにドリブルで相手を抜くことはできないのと同じです。」
    • 現場「なのでまずは足元の足し算引き算から確実にできるようになることを推奨し、それからより高度なことができるようになりかつ必要であれば改めて割り算の導入を考えるべきかと思います。基本をきちんと身に着けることで計算力が身に付き生産性が大いに向上します」
    • 社長「なるほど、ではまずは・・・」

    ポイントとしては、たとえ話で相手が理解しやすいようにしていることと、代替案のメリットを提示していること。サッカーで例えていればここは相手がわかるスポーツなりに置き換えればよい。とにかく人工知能や機械学習について相手は詳しくないのだから、そのままこちらのフィールドで話をしようとしても拒絶されるだけなので、出来る限り相手の解り易いフィールドに話を持ち込む努力をしよう。

    また、いきなり「できない」という言葉は、たとえ本当にできないことであっても代替案も何も示さないと拒否反応を示す人が多い。要するに「印象が良くない」わけで、そんなの知るかと言いたいのだがそうもいかない。

    そしてこういった会話にするには普段からの関係構築は大事で、まったく話したことの無い人が相手だと社長どころか同僚でもなかなか言いづらい。コミュニケーション嫌いにはつらいところであるが、それで会社が大損したり、良くても大きな無駄を費やせば結局まわりまわって自分も損をするのであるから、そこはちょっとした考え方の転換をしてもよいのではないだろうか。

    ■こんな場合はあきらめる

    いつもうまく話が進むわけはないが、ダメなケースとしては

    • ○「ディープラーニングでやりますと受注してしまった」ので無理は承知だがやってくれ
    • ○「ディープラーニングの実績がないと宣伝ができない」ので無理は承知だがやってくれ

    だったりで、こうなるとまた話は別。恨み節を言いながらもできることが何かを考えることに力を尽くそう。

    もう1つのケースはまさに「どこかで聞いてきた話を鵜呑みにして具体的な内容もないまま現実を無視して丸投げしようとして反対されたこと」に対する反応で、まさによく話のネタにされる場合だが、これは「自分の言ったことに従わないこと」が気に食わないだけで人工知能や機械学習は関係ない。これはどうにもならないので、放っておいても自滅するだけだがそれも我慢ならないならそのまた上司にでも言いつけに行こう。それが社長であったら何も言わずに転職活動を始めよう。

    ■言うは易し、行うは難し

    なんてことを考えながらも、「あいつ何も知らないくせに勝手なこと言うんじゃねーよ」と日々愚痴をこぼしているわけで実に「言うは易し、行うは難し」ではあるのだが、少しでも実践できるように心がけたいものだ。

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    タグ:人工知能 機械学習 コミュニケーション


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