データ分析とインテリジェンス

誰でも使える・素人にも使える分析ツールはいったい誰が使っているのか

■導入するけど使われないツールたち

誰でも使える・素人にも使えるという触れ込みの分析ツールがあるが、本当に活用されているのかというとかなり疑問が残る。実際のところ、導入したけれども使っていないのでどうしようという話はよく聞く。導入も維持もただというわけでもないのに、どうしてこのようなことが起こるのだろうか。そもそも、「誰にでも」とは言うが、ではそれは誰のことなのだろうか。

■分析の専門家には不要:前処理もするならそのまま分析すればよい

誰にでも使えるツールということは、裏返せば機能は限られており、専門家には到底物足りない。したがって専門家にはそのツールを使うモチベーションが働かない。ましてやツールの利用にデータの前処理が必要である場合、それはいったい誰がやるのか。もし前処理を自分でできるスキルがあるのならば、ツールを使わなくてもコードを書いて分析できるスキルもあるはずで、その方が遥かに応用が効くのでやはりツールを利用する必要性はあまりない。

■営業には不要:理論を知らないで使っている人が出した分析結果など怖くて使えない

そもそもExcelで単純な集計ができない人も多いのに、分析などできるわけがない。ツールは使えればそれでよい、という反論があるかもしれない。たしかに車を運転するのであればその構造の詳細を知ることは必要ではない。しかし、車を作る側の人がろくに構造も知らないでは話にならないだろう。何をしているのか解らないがツールに投入したら結果が出てきたのでそれを使うというだけでは、データや手法の選択が間違えていた場合どうやって気づくのか。

■経営者には不要:そもそもデータをいじくりまわすのは経営者の仕事ではない

そこそこの規模の企業であれば、経営者が自分でツールをいじって分析するというのは考えづらい。もっと規模が小さな企業であれば分析をすることはあるかもしれないがExcelで十分であろう。

■結局何が起きるのか

この手のツールは最終的には次のうちの3つのどこかに落ち着くことが多いようである。

  • 1・そのまま放置
  • 2・ベンダーかコンサルに頼んで使える人を入れる、または使ってもらう
  • 3・社内の使える人かベンダーかコンサルに頼んで業務用プログラムを作ってもらい、それを使うだけ

一番多いのは1であろう。使われずに毎月コストだけかかるツールが一体どれだけあることか。無駄なツールを入れてしまったことの責任を取らされるのを恐れる担当者が、役に立っているふりをして延命させていないか。本当にそのツールに見合うだけの利益を上げられているのか定期的に調査すべきである。ただしその際担当者の責任を問わないこと。一度でも責任を問うたら以後正しい情報が上がらなくなる。

2は自分達で使えないので詳しい人を入れたり、ツールを代わりに使わせてレポートの提出をさせる場合。これは、1.意思決定の重要な材料を外部に握られてしまう、2.作業がブラックボックス化する、3.ノウハウが溜まらず人材が育てられない、とあまり良い手段ではない。緊急避難的に使うのでなければこの方法を取るメリットはあまりないと思われるのだが、普通に行われているのが実態である。

3は業務の中に組み込まれれば生き残るが、そのツールである必要はあまりなく、「せっかくツールを導入したのだから使いたい」の結果残っただけで他のツールの方がよいかもしれない。あるから使うのではなく、後述のように「本当にそのツールが必要なのか」に立ち戻るべきだ。

■なぜこんなことになるのか

最大の原因は導入企業側が解らないからといって主導権を取らずに外部に丸投げするからである。その結果、ベンダーやコンサルの担ぐツールが導入されることになる。そこに導入企業にとって良いのかという視点は生まれにくい。丸投げしているのが悪いのであって、好きなようにしてよいとお墨付きを与えておきながら、自分達にとって良い方法を選んでくれるなどという淡い期待はすべきではない。

また、ある有名なコンサルタントが「日本では知識が売れないので、まずツールを導入することからその企業に入り込まないといけない」とぼやいていたと耳にしたことがある。実際のところ、分析サービスを提供している企業ではツールの導入も行っていることがほとんど。これは分析サービスだけでは成り立たない(かつ、ツール導入の方が利益になる)からであろう。これも導入企業側の意識の問題である。サービス提供側は需要に従っているに過ぎない。

■それではどうしたらいいのか:無駄なツールを導入する前にやるべきこと

ツールを導入する前に、以下の3点について検討すべき。

  • ・本当にそのツールが必要なのか
  • ・利益は十分に出せるのか
  • ・導入した後に使い熟せるだけのリソースが揃っているか

本当にそのツールが必要なのか改めて考えること。そのためには結局のところ「何がしたいのか」という最初の問いに戻らなければならない。何がしたいかを自覚し、そのためにはどうするかを考えた時初めて実現するためのツールを何にするかを決めることができる。場合によってはツールの導入ではなく分析サービスのコンサルティングを依頼するべきという結論になるかもしれないが、それが何か問題があるのだろうか。

利益については言うまでもないが、導入時だけではなく導入後の維持管理コストも考慮する。特にツールの利用者が稼働することになる時間を忘れない事。3つ目も同様に、導入しても使える人がいない、データが足りず収集にさらにコストがかかるなどが無いように、必要なリソースがあるか、無ければ準備するのにコストはどれぐらいかかるかを考えておくこと。

この3点のうち1つでも欠けているようであれば、そのツールの導入は時期尚早である。

■ツールに関する第三者評価の必要性

社内で検討するのが一番であるが、詳しい人材がいない、いても担当者になっていて利害関係が発生してしまう場合は、ベンダーと利害関係の無い第三者による評価によって導入を検討する方法が考えられる。もし社内に不要なツールがあってコストがかかっていると思われるならば、是非検討してみるのがよいだろう。

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