データ分析とインテリジェンス

最悪のデータ分析組織とは

■データ分析組織について考察する

ここ数年ビックデータやデータサイエンティスト、そして機械学習と人工知能のブームもあり、データ分析が個人の活動ではなく組織として体制を作る企業も増えたと聞く。データ分析の組織化については今後大きな課題になると予想されるが、いままで現場レベルですらほとんど存在しなかったデータ分析をいきなり組織化しようとしてもみんな手さぐり状態であり、そこに特に外注丸投げ体質が加わって組織が機能せず人も育たず2・3年で崩壊するといった事態も散見される。

これから先、いくら日本企業がデータ分析に疎いと言ってもその拡大と共に組織化していく企業は増えてくるだろう。その際、参考の1つとして誰にとっても不幸でしかない最悪なデータ分析組織を捉えて、そこからどう修正していくかを考えていくのが有用ではなかろうか、と思い当たったのでまとることにした。同じ組織は2つと無いとしても、うまくいかない理由はそれなりに共通しているので、これから組織化を行おうとしているならば注意して欲しい。

■最悪のデータ分析組織とは

もしその企業にとって最悪なデータ分析組織を作るとしたらどうするだろう。

  • ・マネージャーはデータ分析の実務経験がないので権力だけで押さえつけ
  • ・メンバーは実務能力に乏しいので社員だけでは仕事が回らず
  • ・外注のエンジニアに丸投げする

データ分析に取り組む企業にとってこれ以上に悪い組織というのはなかなか考えられない。では、何が悪いのか。

■企業にとって

流行に乗ってだとしてもデータ分析を組織化しようと試してみることは間違いではない。しかし、データ分析の経験者がいないかいても若すぎてマネージャーにできないからといって、適当に(というわけではなかろうが)マネージャーを任命すればいいというものでもない。

データ分析の実務経験が無い人がマネージャーになる弊害は数多い。まずデータ分析そのものを知らなければ組織に何が期待されているかを正しく認識することはできないだろう。もちろん社内外にデータ分析を売り込むにも自分の知らない事をアピールできるわけもない。加えてメンバーが具体的に何をしているのか専門的になればなるほどわからないのでパフォーマンスを正しく評価できず、知的生産活動と単純作業の区別がつけられないので技術者に単純作業をさせて失望されるし、酷くスキルの低い業務委託に足元を見られても気づかない。影響が実感できないのでインフラを整えるためのリソースを確保することにも動きが鈍くパフォーマンスは下がって不満が溜まり、あげく有能な人には離反される。要するに、良いことなど何もない。

しかし、その実情は経営者にはなかなか伝わらない。なぜならば、データ分析に無理解な人を組織をマネージャーに任命するぐらいなので、経営者や上司も同様に、いや実情を見ることができない分それ以上に無理解であり、さらには運営がうまく行っていると言わざるを得ないマネージャーからの報告を精査できる能力もないからだ。かくして最悪なデータ分析組織は遠からず「データ分析なんて役に立たない」という捨て台詞と共に崩壊する日を迎えることになる(か、良くてオペレーター中心の小さなチームが細々と残るだけになる)。

■マネージャーにとって

不幸にもデータ分析未経験にも関わらずマネージャーに任命された人にとっては試練の時間となることは間違いない。実務経験がないことはある程度経験がある人からはすぐわかる。それを誤魔化そうとしたりすれば最初から信頼されなくなるし、とはいえまったくわかりませんでは足元を見られかねない。データ分析のマネジメントを勉強しようにも時間もなければよい書籍も見当たらないし、参考にできそうな事例もほとんど見当たらなければ相談できる相手はもっといない。そもそもデータ分析の実務経験者が少なく、いたとしても専門知識はあるけれどもコミュニケーションがあまり得意でない人も多く組織運営の補佐をさせるには心もとない。これがデータ分析組織のマネージャーの置かれる現状だ。

だからといって誰かに教えを請うこともなく、自分だけで決めたことに対して意見をされたら権力で押さえつけるやり方ではパフォーマンスは落ち結局自分の首を絞めることになるだけだが、その自覚がない人がマネージャーだったらその組織が崩壊するのはデータ分析に限らない。

組織の運営に失敗すればマネージャー自身ににとっても評価には繋がらず、中途半端なことばかりしていれば本人はもちろんメンバーも費やした数年が無駄になってしまう。しかし組織といいつつ1人や2人だけであれば自分で学びながら実務を身に着けるという方法も取れるだろうが、すでにある最悪なデータ分析組織のマネージャーに任命された場合は同情するしかない。

■メンバーにとって

最悪のデータ分析組織にメンバーとして所属した場合に最も危険なのは、実務能力を身に着けられないこともあるがそれ以上に実務能力の無さを自覚することができない、ということに尽きる。自称ディレクターや自称アナリストは結構いる。本人は誰かに指示を出してコントロールしているつもりになっているが、実態は外注や部下が動かしているので別にいなくても誰も困らないどころか邪魔でしかない。そして当人はそのことに気が付かない。その部下はさらに外注に丸投げすることを覚え、また同じような人が量産される。新卒でも3年もすればどこにも行けない人の出来上がりだ。

なお悪いことに会社の立場を自分の力と勘違いして実務を行う外注を見下したりしだす人も出てくる。改善の提案も自分への反抗と勘違いし、「金を払っているのだからやれ」が常態化する。そんなことをしていればやがて残るのは大したスキルもない人達ばかりになるが、それすら自らを省みることもなく外注のせいにする。本人の勉強不足の責任は大きいとはいえ、それ以上に環境の与える影響は計り知れない。

いや、分析は自分でやっている、前処理や集計といった作業部分を外注しているだけなので問題ないと思うのは大変な勘違いである。データハンドリングの実務能力が乏しいと誰かに依頼を出すにしても過不足が多く手戻りが発生したり優先順位を間違えるなど非常に無駄が多くなるなど問題が起きるが、そのことを指摘してくれる人は本当に少ない。基礎練習もせず試合ばかりやっているのと同じで、それなりに誤魔化せるかもしれないが決して一流になることはできない。その会社に守られているうちは良くても外に出たその日から使えない人になるが会社の看板に一生守られていればそのことに気が付く必要もない。どのような道を選ぶかはその人次第であるが、気が付かなければ選択することもできない。

■外注先にとって

実は最悪のデータ分析組織はその企業にとってのみならず、外注先にとっても最悪である。短期的にかつ派遣者のキャリアなどを一切無視すれば実に都合の良い取引先に見えるかもしれないが、見方を変えればせいぜい2・3年で次の派遣を探してはゼロからまたやり直さなければならないので極めて非効率。良い人材を送っても派遣先の企業にはその価値を理解できないため報酬を増やすことは難しいが、そんな企業は金は出さないけれども要求だけは高い。

派遣される人にとってはもっと状況は悪い。「外注のエンジニア=単なる作業者」として捉える人も多く、悲惨な派遣先だと何の経験もない新卒社員の小間使いとして使われるだけでなくより高度な仕事への挑戦の機会も少なくなり、スキルも伸びない。キャリアも積めないので次の場所に行くにも同じような仕事で食いつなぐはめになる。

■無理矢理組織化すれば、誰がやっても多分こうなる

ざっと最悪のデータ分析組織について概観してみたが、その原因として考えられるのはなぜ日本でデータ分析が定着しないのかを考えると解りやすい。ようするに必要とされてこなかったからで、国家レベルですらまともに取り扱われてこなかったデータ分析がそう簡単に企業活動に取り込まれるわけもなく、したがってデータ分析の実務経験者がそもそも少ないため、誰がやってもある程度は似たような状態になるのはやむをえず、無理矢理に拡大して組織化しようとすれば最悪のデータ分析組織やそれに近いものになるのだと考えられる。

経営者の責任であると糾弾するのは容易い。しかしおそらく糾弾している当人が同じ立場であれば、概ね似たようなことになろう。これは経営者が無能だからというよりは、データ分析の文化が存在しない場所で生きてきた人の中から経営者になった結果であって、経営者になったからデータ分析を無視してきたというわけではないからだ。つまり、現在の日本においてはこの最悪のデータ分析組織ができる状態がむしろ普通なのである。

■修正するぐらいなら1から作り直した方が早いのかも

今ある組織を修正しようするならば、やるべきことはマネージャーの交代だ。しかしデータ分析の実務経験があるマネージャーはは本当に少ないので、この案は残念ながらあまり現実的ではない。人望があり、部下に任せることができる人であればメンバー次第で機能するだろうが、そんな人もまた少ないのでとりあえず入れかえたところでさほど結果は変わらない。常に探し続けることは必要だが、今すぐに見つかる可能性は非常に低い。

であれば、現在のメンバーに実務経験を積ませながら徐々に拡大していく方法しかない。ただしマネージャーがそのままいても邪魔になるだけなので、一度組織を解体して作り直す方がよいかもしれない。新組織のメンバーには分析から前処理まで幅広く経験を積ませ、適正に合わせて分担していく。その中からやがてマネージャーになれる人も出てくる。外注は特定部分の作業を切り分けて丸ごと任せるのではなく、メンバーの足りない部分であれば前処理だけでなく分析まで広く補完させる。うまく使いこなせないならば活動を縮小してまずできる範囲の事をやる。

■データ分析組織はこれからが本番

データ分析組織についてあまり語られてこなかったのは冒頭にも書いたようにそもそもデータ分析自体がほとんど行われていないか、特定の個人に依存していたからであり、組織として動いてきたことが無いためだが、今後はマネージャーとしてどのように組織を動かしていくかを求められる人も出てくる。データサイエンティストやデータアナリストのキャリアと合わせて最高のパフォーマンスを上げるにはどうしたらいいか今後も追求していきたい。

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タグ:組織 キャリア


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