データ分析とインテリジェンス

わたくしは注進しなかったからこそ命があったのです・・・中国の古典『史記』に見る情報の失敗(1)

■情報を無視して失敗した歴史からデータ分析の重要性を学ぶ

家臣や部下からの情報を無視したり、間違えた情報を元にして戦いに負ける例は数多い。データ分析を無視するということが、どのような結果に繋がるかを歴史から学ぶために、史記から情報を無視して失敗した事例を引いてみる。

■なぜ史記か

『大本営参謀の情報戦記』は、主に1人の情報参謀から見た日本軍の情報についての記述だったが、情報(つまりはデータ分析であり、インテリジェンス)を無視することがどれだけ危険であるかを主に経営者・マネージャークラスに知ってもらうためには、リーダーが情報を無視した結果どうなったかが書かれている歴史書がよいだろうということでまず史記を取り上げた。知名度で言えば遥かに及ばない三国志とどちらにしようか迷ったのであるが、それは次の課題として残しておく。

底本はちくま学芸文庫から出ている『史記』全8巻である。現代語訳になっており読みやすい。結構な分量なので、最初は横山光輝を初めとしたマンガ版でも良いだろう。

■わたくしは注進しなかったからこそ命があったのです

「おまえはどうして早くわしに注進せず、こんなことにまでしてしまったのか」と言うと、「わたくしは注進しなかったからこそ命があったのです。早く注進しようとしたら、とっくに殺され、どうして今まで生きていましょう」と言った。

秦の始皇帝の死後、その遺詔を改竄して帝位についた二世皇帝胡亥は、馬鹿の故事で有名な宦官の趙高を重用した。その趙高が反乱を起こして宮殿に攻め込んできた際、戦わない近侍に怒った胡亥が近くにいた宦官に言った言葉である。

前段を知れば何を今更言っているんだと呆れてしまうことだろう。将来力を持ちそうな大臣や公子(二世皇帝の兄弟たち)達を殺害・逮捕する、諌めれば朝廷を誹謗する者とされる、当時勃発していた陳勝・呉広の乱についてその実態を伝えようとした人は獄に下される。こんなことをしていれば、臣下が情報を伝えなくなるのは当たり前ではないか。

数多くある情報の失敗の中で、この話を最初に持ってきたのはやはり「情報が上がらないのは、部下のせいではなくリーダーの責任である」ということが明確にわかるからだ。殺害や逮捕は無いにしても、気に食わない情報や悪い情報を無視する、伝えた人を怒ったりひどいと左遷するぐらいのことは現代のビジネスでもよくある話。そしていざ事が起きると「なんで今まで言わなかったんだ!」と言い出す姿はまるで胡亥そっくりだ。そうなった原因が自分にあることを自覚できなければ、同じことを繰り返すだけである。

逆に人の話を良く聞くということで歴史に名を残しているのが唐の太宗で、その言行を記録したとされる『貞観政要』には人の話を聞くことをいかに大事にしているかという話がたくさん書いてある。いずれ貞観政要についてもブログで取り上げる予定。

次回以降、順を追って情報の失敗について見ていくことにする。

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タグ:中国の古典『史記』に見る情報の失敗


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