データ分析とインテリジェンス

現場の情報をろくに審査せず鵜呑みにすると大変なことになる・・・『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析(8)

■現場の情報をろくに審査せず鵜呑みにすると大変なことになる

司令官以下の苦悩は参謀に至るまで、要するに敵に関する情報が不足し、第一線の状況が十分わからないことに起因していた。第一線と司令部とが海を隔てて四百キロとは、東京から大阪ぐらい離れているのだ。

司令官とはラバウルにいた第八方面軍の今村均大将、第一線というのはブーゲンビル島にいた第六師団のことで、これは南方戦線視察にでた著者が今村大将に挨拶した際に感じた苦悩の原因について語っている。

そもそも第六師団は過大評価されたブーゲンビル沖航空戦の戦果を基に反撃するために送り込まれたのであるが、ここでも戦果の情報の収集と審査で失敗している。のちに台湾沖航空戦でデタラメな戦果発表から捷一号作戦の発動という同じような話があるが、現場の情報をろくに審査せず鵜呑みにすると分析を誤るという例である。

これはビジネスでも起こり得る問題で、リテラシーの低いマーケターあたりが意図的に、あるいはそうでなくてもキャンペーンの結果を過大に報告し、それに輪をかけてリテラシーの低い経営者層が鵜呑みにしてキャンペーンの拡大を指示、結果大失敗して多大な損害を与える、というような場合である。聞けば明らかにおかしいと感じなければならないレベルの数字であっても、感度が低いとわからないものらしい。またそういう人に限って一度決めてしまうと修正が効かずに過ちも認めたがらない。ビジネスならせいぜい金と時間を失う程度なので戦時に比べれば被害は少ないのかもしれないが、それにしても巻き込まれる側には迷惑以外の何物でもない。

■情報が存在しないのではなく、使われないだけだ

それでも第一線の第六師団は、かなりの戦況情報や米軍の上陸兵力、戦闘の特色、飛行機の進出、艦砲射撃の状況などを電報で報告してきていたが、これらの情報はだ第一線部隊が敵と戦って血を流して得た貴重なもので、電報一枚にも多くの命の犠牲がその裏にあることを、現地で身をもって知った。同時にこれらの報告は、「もうこんな苦戦を次の部隊にさせるな」という遺書でもあった。

現場の情報を鵜呑みにするのは危険であるが、無視するのはさらに悪い。情報が無いのは誰のせいでもなく、経営者側の責任である。現場には情報が確実に存在する。人材と同じで存在しないのではなく、使われないのである。

■現場を見ないで良い分析はできない

満州では敵は飛行機を持たなかった。爆弾を受けながら初めて攻者と防者の精神的格差の桁違いの大きさを知ることができた。第一線の苦衷を自ら経験したことのない大本営参謀が東京の机の上で書く命令や計画が、いかに形式に流れて、第一線の現実にほど遠いものであったかも理解した。

ラバウルからニューギニアのウェワクに移動したその日に空襲を受け、制空権について考えている著者が、大本営参謀の計画についてそれがいかに現実に即していないかを指摘している。

いわば業務経験のまるでないMBA取得者が経営企画をやっているというところか。そんな連中が現地に行くこともなく、現場の話を聞くこともなく作り上げた計画で、うまくいくはずがない。それでもなぜか権力は持っていて、失敗しても責任を取ることもないのだから始末が悪い。そしてそのツケを払うのはいつでも現場というのはいつものことだ。

データ分析を行う際にもデータだけを相手にし、現場を見ないと同じことが起きる。集計手法がいくら正しくても、限られたデータだけから見えるのはごく一面にしか過ぎない。現場に足を運び、自分で体験しなければ良い分析は生まれないことを常に忘れずにいなければならない。

次回:(9)・・・第二部には特別に情報訓練を受けた者はゼロであった

『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析 目次

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