データ分析とインテリジェンス

第二部には特別に情報訓練を受けた者はゼロであった・・・『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析(9)

■大本営の実態

開戦後二年を経て、第六課はようやく(中略)課の体制が整い、一本立ちしたとはいえ、情報が作戦その他すべてに先行して進んでいなければならないはずなのに、開戦から二年も経ってやっとこの有様では「戦争は負けるにきまっている」と思う読者も多いであろう。が、残念ながらこれが事実であった。

普通に考えれば先に情報を集めて分析し、それを基に戦略や作戦を考えるということになるはずだが、その普通なことが行われていなかったのが大本営であった。これで戦争をしているのだから、劣勢になるのは当たり前だろう。もっとも、いまだに情報分析の部署もおかずに経営を行っている企業の方が遥かに多いことを考えると、大本営のことを笑えない。

ただしここだけ見ていると本当に何もしていないように見えてしまうのだが、対ソ連ではロシア課がスターリングラード戦のころ独ソ戦の見通しをソ連有利として出していたし、開戦前にはマレーなどでの諜報活動も行っている。もっともこちらがうまくいったのは英国側の怠慢のせいで、活動していることはバレバレだったようだが。

いくら日本人が情報に弱いとはいえ、直接的で解りやすい脅威に対してはさすがに警戒するようなのだが、脅威が見えてから対応するのではなく、事前に情報を集めて分析・予測することでその損害が避けられるのであれば、行わないのは単なる怠慢だ。

■第二部には特別に情報訓練を受けた者はゼロであった

米軍が戦後発表した調査書の、「戦前における陸軍情報と戦時中における拡充」という項には
「(前略)真珠湾攻撃に至って、日本は初めて情報の総元締めである大本営第二部の陣容が貧弱なのに気が付いた。また第二部には特別に情報訓練を受けた者はゼロであった・・・」

これは著者も自身の体験として「陸大でも情報のための教育を受けた覚えは想い出せなかった」と言っているが(無視された情報教育・・・『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析(2)参照)、何しろゼロというのだからどうしようもない。日本の参謀本部は作戦課が力を持つドイツから学んだ影響なのかもしれないが、そのドイツはと言えばカナリスのアプヴェーアは有名で、戦後もゲーレン機関からBNDを立ち上げているわけで、日本ほど酷くはない。いったいこの違いは何が原因なのだろうか。

この情報軽視が戦後の反省に生かさせるどころかさらに悪化して、国家レベルで見れば対外情報機関はいまだになく、企業レベルで見ればまともにデータ分析が機能せず、教育で見ればインテリジェンスを学ぶこともできずとあまりにお粗末な現状が問題として認識されることすらないのが実態だ。

次回:(10)・・・フィクションは絶対許されない

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