データ分析とインテリジェンス

データサイエンティスト採用のために求人情報を出す前に考えること

■データサイエンティスト=スーパーマンはもうやめよう

データサイエンティストは高度な統計学や機械学習を使って分析する専門家・・・という触れ込みだったはずが、最近ではどうやらそれ以外の能力も要求されるらしい。エンジニアリングについては以前から話は出ていたが、今度はマーケティング、コミュニケーション能力、果ては経営者としての視点まで要求される。

しかし、実際にはそのような人材はほとんど存在しないし、いたとしても雇うことなど実質的に無理なので、スーパーマン像を作り上げて過度な期待をするのは止めて、現実的な視点に立って雇う前に考えるべきことをまとめた。

■最大の要因はデータ分析を使う文化があるかどうか=結局は経営者の問題

どんなに優秀な人を高い報酬で雇ったところで、その企業にデータ分析による意思決定を行う文化が無ければ全ては無駄である。分析に知識も興味もなく、自分で作文するのが当たり前の企業において、客観的な視点でデータを分析し、結果を提示するような人間はむしろ邪魔物扱いされるだけだ。自分が必要とされているかどうかは普段の生活の中ですぐに実感できることであり、必要とされていないとわかれば逃げ出すか、ふてくされて埋もれるか、いずれにしてもそのスキルがその企業で活かされることはないだろう。

そして、データサイエンティストが活躍できるかどうかはこの企業文化が一番の問題となる。いくら専門家がいたところでその他の人にデータ分析を活用する意識が無ければどうすることもできない。この文化は一朝一夕にできるものではなく、変えようとしたところですぐに変わるものではない。

それを変える方法はただ1つ、経営者自身がデータ分析による意思決定を実践し、自ら範を示すことである。これは分析者の提示した結果に必ず従わなければならない、ということは意味しないが、もし他人にはデータ分析を重要視しろと言いつつ、自分はデータ分析を結果を一切無視して独善的に判断するのであれば、それを見た社員は経営者のマネをするか、あるいは言われた通りにしているよう表面を取り繕ったとしても文化として定着することはない。

■分析能力よりもビジネス理解とコミュニケーション能力を見る

「ビジネス理解もあって分析もできる人を雇おう」と思うかもしれないが、両方高いレベルでできる人などめったにいるものではない。専門スキルがある人というのは「分析の知識は優れているがビジネスに興味がない人」が多い(これは分析に限らずだが)。そこで分析スキルだけを見てしまい、スキルがあれば何とかなるだとうと雇えば、孤立と衝突を生むことになる。

データ分析力がまだ高くない企業は、最初はビジネス8割、分析2割で見るのがよいだろう。スキルもあまり高度なレベルは必須ではなく、入門書を一通り理解しているレベルでひとまず十分であり、ビジネスにおける実践経験の方が価値が高い。それ以上の知識や経験があったところで企業側が使い熟すことは難しい。

なお、ビジネスと分析の双方に理解があり、さらに組織運営やマネジメントへの視野も持っているのであれば、分析者として雇うのではなくデータ分析プロセスをマネジメントする人としてより高いランクでの職種をオファーするべきだ。そこそこの分析者であれば外注も含めて代替者を探すことは可能だが、データ分析プロセスをマネジメントすることができる人はデータサイエンティスト以上に貴重である。

■仕事はあるのか

データ分析を始めようと思ってとりあえずデータサイエンティストを雇ってはみたものの持っている知識が使えるような仕事が無く、仕方なく振った仕事がVBAでのツール作成や分析とは関係ないディレクターなどでは単なる飼い殺しであり、お互いに不幸である。博士を何人も抱えていながらまともに仕事が取れず2年持たずに崩壊した分析チームもあるぐらいで、仕事ではなく先に人を入れようとするとこのようなことが起きる。

そもそも今までデータ分析に取り組んでいないのであれば、いきなり専門家を連れてきたところで機能しない。最初に必要なのはデータサイエンティストではなくデータ分析プロセスをマネジメントする人である。もちろん経営者自身がデータに基づいた意思決定を行う、という意識を持つのが大前提。

■求めるスキルは何をどれぐらいか

データサイエンティストのスキルというと分析手法にばかり焦点が当たるが、以下のことについても自社においてどのような人材が必要かを確認した方が良い。コンサルが必要なのに対人関係がうまくない専門家を雇ったりしたらお互いに不幸になるだけだ。

  • ・特定分野での最先端の知見が必要なのか、全般的に知っていれば良いのか
  • ・手法を道具として使えれば十分なのか、理論的背景の理解は必要か
  • ・エンジニアリング能力は、前処理を含めて分析するためのコードが書ければよいか、インフラ構築のための知識が必要か
  • ・コンサルや営業スキルは独力で仕事を開拓してプロジェクトを回せる能力か、アナリストしてコンサルと組むのか

データサイエンティストを雇う前にスキルについて考えるべきことにより詳細な議論を行った。

■同じレベルの人は他にいるのか

1人分の仕事しかないから1人雇えば良いと考えるかもしれないが、回りのレベルとあまりにかけ離れたレベルの人を雇ったところでまともに話ができる人がいないのであれば孤立してしまう。同時に2人以上が難しければ、特に人員が拡大できるまでは現状に不満を持っていないか注意を怠らないこと。スキルがあればあるほど転職は簡単なのだから。

採用時に現状を正直に伝えておくことも重要。いざ実際入社したら「話が違う!」なんてことになったら最初から士気が下がって躓いてしまう。

■使いこなせるのか

データサイエンティストを雇えばあとは勝手にやって利益を上げるなどと考えるのは間違いで、生かすも殺すも使う側次第。経営者自身がリテラシーを高めるか、あるいはデータ分析プロセスをマネジメントする人を先に確保するか育ててからでないと、専門家を使いこなすのは難しい。

■その人にいくら払うのか

上記の問題がクリアできるして、では雇うとしたらいくら払うのか。高度なスキルを求めるのであれば、それ相応の報酬を出さねばならない。最初に高額を提示することに躊躇があるならば、結果に応じてボーナスを支払うようにしても良いが、納得のいく額を出さなければ離反される。結果を出しているにも関わらず、見合った報酬を出さない企業が多すぎる。

■魔法の杖は存在しない

高い報酬も、高度な理論を使う機会も、切磋琢磨できる同僚もいない環境に優秀な人が来るわけがない。もしそれらの機会を提供できたとして優秀な人が獲得できても、それだけで全てが解決して業績があるなどということもありえない。

そして、もしうまく行かなかったとしても、データサイエンティストの責任ではない。繰り返しになるが、データ分析の失敗の責任は経営者・マネージャーにある。今までデータ分析に基づいた意思決定をしてこなかった上に、丸投げしたら何かいい答えが返ってくると勘違いをし、揚句に失敗したらデータサイエンティストに責任を押し付けたところで何も解決しない。

まずは経営者側の意識が変わらなければならない。

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タグ:経営者・マネージャー向け データサイエンティスト 採用


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