データ分析とインテリジェンス

データ分析に力を入れている企業はもっと情報発信してアピールしてもよいのではないか

■実態がよくわからないデータ分析の活用状況

データサイエンティストやデータアナリストの求人はちらほらあれど、その企業の経営者がデータ分析にどのように向き合っているか、データサイエンティストをどのように扱っているか、分析のレベルはどれぐらいか、チームの同僚のスキルはどれぐらいかなどの実態は中に入ってみないとわからないことも多く、データ分析に力を入れるというのは流行に乗った掛け声だけでまったくお話にならないということもある。

また、データ分析の成功例が表に出ずらいのは、情報の有用性を理解していればしている程、データ分析に力を入れていることを口外することへのデメリットも知っているために情報管理が徹底されるからということもあるだろう。それだけうまく行っていないということの証左なのかもしれないが、表だって出て来るのはあたりさわりのないぼやけた情報と、データ分析の成功例のように見えたその実ツールの導入例として出て来るぐらいであまり価値は無い。

そこで、データ分析に力を入れている、あるいは本気で力を入れようとしているのであれば、企業はもっと情報発信してアピールしてもよいのではないか、というのが今回の話である。

■表に出しても追いつかれることは少ない

繰り返しになるが、情報の有用性を理解していればしている程、情報を守ることへの意識が高くなる。逆に情報の価値を認識していなければ情報を守る意識も生まれない。それは現在の日本の情報セキュリティの甘さが証明している。

なぜ「データ分析に力を入れているという情報を守る必要がある」と考えるかと言えば、それが競争力の源泉であり、公にすれば当然真似されるからと考えるからであるが、データ分析と一言で言っても、その中には「データ分析を意思決定に使う文化」「経営者のリテラシー」「データ分析のプロセスマネジメント」「データサイエンティストのスキル」「分析手法」「分析インフラ」「施策実行能力」「データサイエンティストへの評価・キャリアプラン」など様々な要因があり、たとえ実態を全てとは言わないが公開しても、そんな簡単に真似されるような話ではないのではないか。

例えれば、一流レストランのレシピを公開したところで同じ料理を作れる人などほとんどいないのと同じで、もしレシピを公開するだけでそれがすぐ取り込まれるのであれば、料理がまずいと評判の某国はとっくにその汚名を返上しているはずだ。そうなっていないのはその国で長い時間をかけて培われてきた文化であるからだろう。ということはデータ分析による意思決定の文化が弱い日本においては、かなりの情報を出してもそんな簡単に取り込まれないだろうことは想像がつく。ましてやデータ分析の場合はその企業ごとに業種・業態・文化・人材などが違い、他社での事例をそのまま真似できる場合などあり得ない。

■情報発信のメリットは人材獲得に有用なこと

求人サイトや人材エージェントからの情報はいいことばかりしか書いておらず、数回の面接程度ではその実態がつかめるはずもない。応募する側としてはほぼギャンブルになってしまうのが現状であるが、情報発信されていれば、自分の望む仕事ができるか、キャリアはどうか、求められているスキルと自分の現状がマッチしているかなどなど参考にしやすい。企業側としてもどのような人材を求めているかを明確にでき、ミスマッチを予防できる。これは採用後のギャップを減らすことだけでなく、応募に対する対応、審査や面接にかかる時間も節約できる。

面接に出かけてはみたが話を聞いてみると期待していたのと違う、あるいは面接してみたら求めているスキルと違うというのはよくある話だ。極端な場合だとマスコミに取り上げられた直後に数百件の応募が殺到して、書類審査だけで膨大な時間を費やし、まともに内容を見られないなどということになれば本末転倒である。

以上から考えると、ことデータ分析に関する積極的な情報発信は、真似されるリスクよりも人材確保のメリットの方が大きいのではないか、というのが結論である。

■中堅企業の方が効果は大きい

いかにして優秀な人材を確保するかはすべての企業にとって最も重要な問題であり、名の知れた大企業であれば放っておいてもそれなりに人は来るだろうが、中小企業の場合はそうは行かない。とはいえデータ分析について言えばデータ分析の専門家になりたければ中小企業に行く理由はあまりないという問題があり、あまり企業の規模が小さすぎるとそもそも機能しないため、ある程度の規模、具体的には数十~数百人程度の中堅企業あたりに情報発信はより効果的に働くのではないだろうか。もちろん大企業でも十分に行う意味はあるだろう。ただし、かなり規模が小さく少数精鋭な企業の場合は知人を通しての採用の方が効率が好さそうではあるが。

■嘘はすぐに広まるので逆効果

当然ながら、言っていることとやっていることに違いがあれば今いる社員には冷ややかな目で見られ、新しく採用できたところで士気が上がらずパフォーマンスも落ちる。使えないから入れ替えればよいかというとそうでもなく、すぐに実態が広まることになり、優秀な人ほど採用がしづらくなるので長期的にはマイナスでしかない。余計な脚色はせずに現状はまだまだでもこれから力を入れていこうと考えている、という状況であればそのことをきちんと説明した方が良い。

■企業間での情報の共有も

表に出ていないだけでもしかしたらとっくにどこかでやっているのかもしれないが、現場レベルの人向けではなく、経営者・マネージャー向けにデータ分析をどのように活用していくか、チームをどう運営していくかを話題の中心とした情報共有をする場があっても良いのではないか。日本では先例がほとんど無いだけに、分析の専門家以上に孤独な戦いを強いられていることが多いだろう。先を行く企業で共有する方が、お互いにとってもメリットがあるのではないか。

■とにかくデータ分析は実態がわかりづらい

商品やWebサイトとは違い、データ分析は意思決定のために作られる情報であり見えるものではない。資料は見せられるかもしれないが、結論に至るまでに思考や、ましてやデータ分析を意思決定に使うという文化は形に表せないので、外からは非常に実態が解りづらいのはやむをえないのだが、そこを何とかできたりすれば良いアピールになるのではないか。今後も追いかけたいテーマである。

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タグ:経営者・マネージャー向け 広報


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