データ分析とインテリジェンス

移転しました。今後こちらのサイトは更新しません。移転先→新ブログ

貫かれる「先知」の思想・・・『孫子』をビジネスにおけるデータ分析の教科書として読む(1)

■戦略の書はすなわちデータ分析の書でもある

『孫子』と言えばあまりに有名な戦略の書であり、書籍も様々な人が書いているので読んだことがある人も多いだろう。ところで戦略を考えるためには、必ずその思考の裏付けとなる情報が必要になる。つまり、戦略書である孫子はデータ分析の教科書としても読める、ということである。そこで『孫子』の中からデータ分析に関する部分を抜き出して、主にビジネスにおいてどのように活用するかを考える。現代語訳についてはいわゆる超訳である。順番は特に決めておらず、思いついたら書いていく。

書き下し分については 金谷 治訳 『新訂 孫子』 (岩波文庫)を利用している。なお、「データ分析」という用語であるが、「インテリジェンス」もしくは「情報」と同義語で使っている(後述)。

■データ分析という用語について

データ分析というと、パソコンを使い、数値データを相手に統計学などでデータマイニングをして分析することと連想する人も多いだろう。間違ってはいないのだが、それはデータ分析の一面に過ぎない。例えば競合調査を行うことを考えると、まずWebや新聞などから記事という「データ」を集め、それを「分析」し、競合が次に何をしかけて来るかを予想する、というのもまた「データ分析」なのである。違うのは扱うデータの種類や分析に使う道具で、意思決定のための情報を作り出すというプロセスは同じである。

このことから、通りの良さも加味してまとめて「データ分析」と表記することにする(インテリジェンスでもよい)。プロセスについてはデータ分析プロセスの全体像「インテリジェンスサイクル」とはのこと。

以下本文に入る。

■貫かれる「先知」の思想

競合の状況と自社の状況を知っておけば、百回戦っても危険は少ない。競合のことは分からないが自社のことは分かっているなら勝ったり負けたりする。競合も自社も知らないようであれば、戦う度に危険が訪れる(彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず。彼れを知らずして己れ知れば、一勝一負す。彼れを知らず己れを知らざれば、戦う毎に必ず殆うし)。

「彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず。・・・」は知らない人はいないのではないかというぐらいあまりに有名な孫子の一説。まずは自社と競合を知れという話で、当たり前なようでなかなか実践できない。競合どころか自社のこともろくに知らず闇雲に進んでは失敗するの繰り返しをしている企業は多い。

全体を通して孫子に貫かれているのは、「先知」つまり戦う前に先に知ることであり、それは即ちデータ分析の重要性を唱えているということだ。情報収集の方法としてスパイの使い方を書いた用間篇(間とはスパイのこと)もあるが、用間篇以外においても「先知」がいかに大切であるか様々な場所で触れている。

ここで言う敵とは、直接の競合のことだけを考えるのではなく、ポーターのファイブフォース分析でいう「競争企業」「新規参入業者」「代替品」「供給企業」「買い手」や、景気動向、消費者動向といった顧客の状況、法律改正・規制(あるいは規制緩和)といった政治状況、国際的に展開している企業であればその国の政治・経済・文化などもっと広い意味で捉えておく方が視野が広がって良いだろう。これらはコンペティティブインテリジェンスと呼ばれ、30年ほど前から専門家の組織も存在しているが、日本ではほとんど聞かれない。

■情報に金を惜しむな。惜しむのは愚か者だ

金を惜しんで情報を取らないなどというのはばかげているにもほどがある。人の上に立つ者とは言えず、社長を補佐する者とも言えず、勝利をつかむことなどできない(爵禄・百金を愛んで敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。人の将に非ざるなり。主の佐に非ざるなり。勝の主に非ざるなり)。

さて、その用間篇からあまり知られていないが重要な言葉として、「爵禄百金を愛みて敵の情を知らざる者は・・・」を取り上げる。「情報に金を惜しむな。惜しむのは愚か者だ」とまで言っているのだが、現実はこの逆で、データ分析から得られる知識や、データ分析ができる人には金を出さない。そのくせなぜかシステムにだけは金を出すのだが、システムそのものが価値を生むわけでもないのに、まったく不思議なことだ。

ところで成果を出したから昇進させてマネジメントを行わせようとする場合があるが、データ分析の専門知識とマネジメントでは求められるスキルが全く違うため、うまく行くとは限らない。西郷南洲遺訓の冒頭にも「マネジメントには相応しい人を付けるべきで、成果には地位ではなく報酬で報いなければならない。」と言っているように、データ分析プロセスをマネジメントできる特性があるかを考慮しなければならない。専門家として活動する方が力を発揮できる人にマネジメントをやらせては本人だけでなく部下のパフォーマンスまで下げてしまう。データ分析プロセスをマネジメントできる人については最初に必要なのはデータサイエンティストではなくデータ分析プロセスをマネジメントする人を参照のこと。

次の記事 準備中・・・『孫子』をビジネスにおけるデータ分析の教科書として読む(2)

このエントリーをはてなブックマークに追加

タグ:『孫子』をビジネスにおけるデータ分析の教科書として読む


最新のブログ記事5件

大学や独学でデータ分析の勉強をしただけだと実務で使えない理由
「データ分析をする人」とは何をする人のことを指しているのか
定期レポートを効率化する
最悪のデータ分析組織とは
「何を知りたいのか」がわからなければデータ分析は始まらない

ブログトップ > 貫かれる「先知」の思想・・・『孫子』をビジネスにおけるデータ分析の教科書として読む(1)