データ分析とインテリジェンス

爵禄百金を惜しんで、敵の情を知らざるは不仁の至なり・・・『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析(11)

■鎖国三百年の夢を貪ってきた民族とは

米国人は、国境を隔てて何百年の間、権謀術数に明け暮れた欧州人の子孫である。日本人のように鎖国三百年の夢を貪ってきた民族とは、情報の収集や防諜に関しては全然血統が違っている。

結局のところ、日本においてデータ分析の文化が発展してこなかったのはこの点が大きいのだろう。戦国時代ですら隣近所での小競り合い程度だった国と、複数の国が入り乱れて戦う国々では違うのも当然だ。現在に至っても長い時間をかけて培われてきた文化がそう簡単に変わるはずもない上に、戦争において情報戦で敗れたことへの総括も反省もなく、データ分析を軽視していることへの自覚もないままでいいのだろうか。

■爵禄百金を惜しんで、敵の情を知らざるは不仁の至なり

孫子の言葉の中でもあなり知られていないものに、「爵禄百金を惜しんで、敵の情を知らざるは不仁の至なり、人の将にあらざるなり、主の佐にあらざるなり、勝の主にあらざるなり」という言葉がある。大要は、敵情を知るには人材や金銭を惜しんではいけない、これを惜しむような人間は、将帥でもなく、幕僚でもなく、勝利の主になることは出来ないという意味で、情報を事前に収集するには、最優秀の人材とあり余る金を使え、と教えている。

貫かれる「先知」の思想・・・『孫子』をビジネスにおけるデータ分析の教科書として読む(1)でも触れたが、この言葉は重要である。もっと広まるべきだと思う。そして、実態はまったく逆の事をしている。人材を惜しんで新入社員やスキルの低い人に情報集めだけさせて分析した気になり、使えないツールには金を出しても知識に金を惜しむ。勝利の主になれないのも当然だろう。

■情報参謀にはそうした心理学的研究も必要であった

航空戦の実相は、戦闘参加機以外の誰かが、冷静に写真その他で戦果を見届ける確認手段がない限り、誇大報告は避けられない。(中略)戦術ばかりでなく、情報参謀にはそうした心理学的研究も必要であった。

自分で企画したキャンペーンの効果を自分で図らせたら、うまく結果が出なかったことを誤魔化してうまくいったように見せようとする場合は多い。だからこそ第三者による冷静な分析が必要になるのであるが、このことについて理解している人は驚く程に少ないようだ。その結果、意図的であるにしろそうでないにしろバイアスのかかった報告がされ、検証無しに真に受けた上司やクライアントが間違えた分析を基にして新しい企画を立てて大惨事になるのである。

分析側としては、まず入手できたデータが何等かの意図によって捻じ曲げられていないかを注意しなければならない。これは技術的な理由での欠損とは違うので、どう扱うかではなく、入手方法や種類が正しいのかから検証する必要がある。データを作った側がどのような利害関係があり、その結果どのようなバイアスがかかる可能性があるかを考える。それが「心理学的研究」という意味であろう。

次回:(12)・・・気の毒なのは、とにかく第一線であった

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タグ:『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析 孫子


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