データ分析とインテリジェンス

気の毒なのは、とにかく第一線であった・・・『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析(12)

■机上で地図の上に書いた防禦線

タロキナは地図の上では確かに陸続きであったが、師団主力から時間的に一週間も隔絶しており、戦術的には絶海の孤島になってしまっていた。大本営や第八方面軍司令部が机上で地図の上に書いた防禦線は、ジャングルという地形の障害と、制空と制海という人為的技術的な障害によって陸続きとはいえず、寺本中将のいう点化させられた孤島であった。

はるか遠く離れた東京で現場を見たこともない大本営の参謀が立てた作戦がいかにでたらめであったか。ガダルカナルやニューギニアの悲劇はまたここでも繰り返されているが、どうしてこのようなことが起きるのだろう。

ビジネスでも同じだ。現場を知らない経営企画が作った計画のおかげでひどい目にあった経験のある人も多いだろう。情報を無視するどころか考慮すらしないのは昭和の日本軍とまったくかわらない。机上の作文をよしとしてしまうことは教育なのか文化なのか、どこかに欠陥があるはずだが、一体それはなんなのだろうか。

■気の毒なのは、とにかく第一線であった

気の毒なのは、とにかく第一線であった。上級司令部や大本営が、敵の戦法に関する情報も知らず、密林の孤島に点化された認識もなく(中略)米軍の能力や戦法及び地形に対する情報のないまま、机上で二流三流軍に対するのと同様の期待を込めた作戦をたてたからである(後略)

本書の中で著者は再三にわたって第一線の苦労について書いている。上層部は情報を無視してでたらめな作戦を立てて失敗したところで責任も取らないが、そのツケを払っているのは全て現場である。ましてや作戦を立てているのは安全で快適な東京、第一線は水も食料もない未開のジャングルの中で飢えと病気に苦しんでいる。現場でそれを目のあたりにした著者には我慢できなかったのだろう。

敵の能力や地形も知らずに戦おうなどというのはどうかしているとしか思えないのだが、これも現在のビジネスにそのままそっくり引き継いている。競合調査をまともに行っている企業がどれだけあるだろうか?

自然相手の農業であれば確かにできることは限られるかもしれないが、人間相手の場合は話が別だ。仮にもグローバルなどと言われる中で、そろそろその認識を改めるべき時がきているのではないか。

■日本軍最高司令部は東京にあった大本営、米軍最高司令部はポートモレスビー

日本軍最高司令部は東京にあった大本営、米軍最高司令部はポートモレスビーにあった。どちらが戦場を存分に知りつくしていたかは、それだけでも明瞭であった。

南海支隊が目指したポートモレスビーは、地図上では大した距離には見えなくとも、実は3000メートル級の山脈越えであった。例のごとく情報も補給もなく、最後は撤退となるが、米軍に回り込まれて壊滅している。1人でも現場に来て実情を知っていれば、もう少しましな作戦を立てたかもしれないだろうに。ガダルカナルでもニューギニアでも、話題になるのは大本営の作戦参謀なのだが、南方軍やもっと前線の第八方面軍は何をしていたのだろう?

次回:(13)・・・戦略の失敗を、戦術や戦闘で取り戻すことは不可能である

『大本営参謀の情報戦記』に学ぶデータ分析 目次

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