データ分析とインテリジェンス

競合分析・競合調査とは・・・『競争優位の情報戦略』で競合分析を学ぶ(1)

■戦略情報に関する良書

戦略情報に関する書籍は非常に少ない上にほぼ翻訳本であるということは、やはり日本で戦略情報の需要がいかに少ないかということであろう。そんな中、これも翻訳本であるが良書である『競争優位の情報戦略 公開情報でここまで読めるライバルの経営戦略』を紹介する。

「競合分析・競合調査」と「コンペティティブ・インテリジェンス」について

最初に言葉について説明しておく。本来であれば、「競合分析・競合調査」と「コンペティティブ・インテリジェンス」は明確に区別されるべき言葉であるが、あえてこのサイトはでは本文の引用以外では基本的に「競合調査・競合分析」=「コンペティティブ・インテリジェンス」を使用する。

明確に区別されるべき理由は2つある。第1に、インテリジェンス(データ分析)とは分析だけではなく、一連のプロセスを持った組織的な活動である(データ分析プロセスの全体像「インテリジェンスサイクル」とは)。したがって、「分析」「調査」だけよりもかなり広い概念である。

第2に、調査対象としてはまずはポーターのファイブフォース分析でいう「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」がある。他にも景気動向、消費者動向、法律改正・規制あるいは緩和といった政治状況、国際的に展開している企業であればその国の政治・経済・文化など、調べることはたくさんあり、これら全てを対象とするのがコンペティティブ・インテリジェンスである(競合調査とは何か ■競合だけが調査対象ではない)。競合調査というと直接のライバル店を指すことが多いが、それだけでは足りない。

このように、「競合分析・競合調査」は「コンペティティブ・インテリジェンス」の一部でしかなく、同じように扱うのは本来では不適当であるのだが、コンペティティブ・インテリジェンスがあまりにも知られていないことと、競合分析・競合調査は直接の競合店を調べるだけではないということを広めるため、あえてこのサイトはでは本文の引用以外では基本的に「競合調査・競合分析」=「コンペティティブ・インテリジェンス」を用いる。

内容の紹介

第一部では競合分析・競合調査の概要、第二部前半ではデータ分析プロセスの全体像であるインテリジェンスサイクルと各フェーズの詳細、後半は誰がどのようには競合分析・競合調査を利用しているか、第三部はその他のトピックという構成になっている。三部構成にはなっているが実質四部構成。詳細は本文に譲るがこれだけを見ても分かるように、全体象を描こうとするのは日本の書籍にはほとんどない。

日本のデータ分析軽視の一環として、競合分析・競合調査もかなり無視されている。近年のデータサイエンティストブームにより話題になっている統計学や機械学習による分析よりもさらにマイナーな存在だ。これは競合分析・競合調査が戦略情報の色が濃いためだろうだからだろうが、まったくといっていいほど存在感がない。

全般的に日本企業の情報収集をやたらにほめているのだが、どうやら外からだと違った様子に見えるらしい。戦略的判断を基にしているのではなく目の前にあるから集めてはいるがあまり使えておらず、成功したのは技術者などの現場の頑張りであって競合分析・競合調査などと呼べるものは存在していないというのが実際のところではないかと思うのだが。それは冒頭にも書いた通り、戦略情報に関する書籍がほとんど発表されていないことが示している。

発売時期

『競争優位の情報戦略 公開情報でここまで読めるライバルの経営戦略』は1998年の発売。原書は『Competitive Intelligence: How To Gather Analyze And Use Information To Move Your Business To The Top』で1996年の発売。洋書では「Competitive Intelligence」で検索すれば多くの書籍があるがほとんど邦訳されない中で、原書の発売からさほど間をおかずに翻訳本が発売されているのは驚きである。タイトルが某有名書籍に似ているのはわざとなのかどうかは知らない。

著者について

著者のラリー・カハナーはジャーナリスト兼作家とのことで、特に情報が専門というわけではなようだ。たしかに分析の詳細ではなく全体像やマネジメントの記述が中心になっている。それゆえに、日本の書籍にありがちな現場の人が自分の経験の範囲内で起きたことを根拠不明瞭のまま書き連ねるというスタイルではない。それはそれで有用な面もあるがあまりに偏りすぎており、より広い視点から見たい場合は翻訳本を頼らねばならないのは残念だ。

■目次

目次はそのまま引用する。読む際は「コンペティティブ・インテリジェンス」=「競合調査・競合分析」とすればよい。

第一部 コンペティティブ・インテリジェンスとは

  • ・第一章 コンペティティブ・インテリジェンスの台頭
  • ・第二章 コンペティティブ・インテリジェンスが企業にできること=インフォメーション対インテリジェンス
  • ・第三章 なぜほとんどの管理職は、いまだにインフォメーション時代にこだわるのか

第二部 現実世界のコンペティティブ・インテリジェンス

  • ・第四章 インテリジェンス・サイクル
  • ・第五章 計画と方向づけ
  • ・第六章 収集
  • ・第七章 分析
  • ・第八章 伝達
  • ・第九章 合併と買収
  • ・第十章 ベンチマーキングとコンペティティブ・インテリジェンス
  • ・第十一章 日本人はいかにしてコンペティティブ・インテリジェンスを実行しているか
  • ・第十二章 他国のコンペティティブ・インテリジェンス
  • ・第十三章 コンペティティブ・インテリジェンス・システムの構築

第三部 問題、機会、そして将来

  • ・第十四章 コンペティティブ・インテリジェンスの費用を正当化する
  • ・第十五章 コンペティティブ・インテリジェンスを欧州連合で利用する
  • ・第十六章 倫理
  • ・第十七章 新しい門番たち
  • ・第十八章 なぜアメリカ政府はコンペティティブ・インテリジェンスにかかわる必要があるか
  • ・第十九章 次の世代のコンペティティブ・インテリジェンス

それではここから本文に入る。

■競合分析・競合調査とは何か

競合分析・競合調査(コンペティティブ・インテリジェンス)を以下のように定義している。

コンペティティブ・インテリジェンスとは、競争相手の行動や、ビジネス一般にわたるインフォメーションを収集、分析し、自社の目標達成に近づくための系統的な手法である。

日本では「競合分析・競合調査」というと、大抵の場合直接の競合店舗の製品・価格を調査するという意味で捉えられているが、「コンペティティブ・インテリジェンス」は「直接の競合企業だけではなくビジネス一般を対象としている、系統的な手法である」。これがつまり「コンペティティブ・インテリジェンス」と「競合分析・競合調査」の大きな違いであるのだが、「競合調査・競合分析」=「コンペティティブ・インテリジェンス」として使う。その理由については冒頭の「競合分析・競合調査」と「コンペティティブ・インテリジェンス」についてを参照のこと。

■インフォメーションとインテリジェンスの違い

インフォメーション時代に生きているとは考えないことだ。私たちが生きているのは、インテリジェンスの時代だ。このふたつはまったく異なる。

インフォメーションとは生の情報で、インテリジェンスとは「意思決定のために分析された情報」である。日本語だと区別なく「情報」とされるが大抵の場合は「インフォメーション」のみを指し、「インテリジェンス」の意味が消えてしまう。なので「情報分析」と言いつつも単に新聞やWebの情報を集めてコメントする程度になるが、これは本来「インフォメーション」のレベルである。これらは区別されるべきであり、必要なのは「インテリジェンス」であることを明確にしなければならない。

日本のデータ分析関連の書籍でも最近はインフォメーションとインテリジェンスの違いについて触れることが散見されるが、まだまだ浸透しているとはいいがたい。原書が発表されているのは20年前であるが、現在の日本と比べても遥かに進んでいると言えよう。

■経営者・経営企画・幹部候補には必須の競合分析・競合調査

データ分析というと現場寄りのイメージが強いかもしれないが、競合分析・競合調査はかなり戦略寄りである。したがって経営者・経営企画・幹部候補には必須の知識だろう。にも関わらず今まであまりにおざなりにされていたのではないだろうか。当然競合分析・競合調査のアナリストも専門職としては存在しないに等しく、経営企画やマーケティング担当者がその仕事の一環として行っているぐらいなので、今後データサイエンティスト同様専門職としての地位の確立が望まれるが、これもあまり期待は出来なさそうだ。

勉強しようにも書籍はもちろんWebにもあまり情報がないため、コンペティティブ・インテリジェンスという言葉に触れることすらないのだからそれもやむをえないのかもしれないが、このシリーズが競合分析・競合調査普及の先鞭とでもなれれば幸いである。

■追記履歴

2015-09-04 「競合分析・競合調査」と「コンペティティブ・インテリジェンス」についてを追加して、本文を修正

次の記事 経営者・マネージャーに必要なのはインテリジェンス・・・『競争優位の情報戦略』で競合分析を学ぶ(2)

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タグ:競争優位の情報戦略 競合分析 競合調査 コンペティティブ・インテリジェンス


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