データ分析とインテリジェンス

「諜報の神様」と呼ばれた男

■書評・感想・・・いつも特定の個人と外国に頼りきりになる日本のインテリジェンスの一幕。

第二次大戦における日本のインテリジェンスが総じていかに悲惨なものであったかは『大本営参謀の情報戦記』を一読すればよくわかるが、それでもごくわずかながらインテリジェンスの重要性に気づき、ときには組織に邪見にされながらも活躍する個人がでる。福島安正や明石元次郎は有名であるが、例外の1人が本書で語られる小野寺信である。

ポーランドやエストニアの情報機関員との関係を築き、ヒューミントにより重要な情報を手に入れる活躍ぶりは本書を読んでもらうとして、小野寺信の活動も、日本のインテリジェンスの特徴である

  • ・組織的な活動ではでなく偶然その任務につき、インテリジェンスの重要性に気が付いた特定の個人の活動にとどまる。当人がいなくなると続かない
  • ・成功するのは外国の協力がある場合で、日本のみの活動の場合はうまくいかない

は見事に踏襲されている。そういえば日露戦争におけるインテリジェンスも英国に大きく依存していたし、戦後はアメリカに頼り切りでいまだに国家情報機関が存在しない。

小説とはいえ『ジョーカー・ゲーム』にも見られるように、少数精鋭が日本人の好みなのかもしれないが、数百万数千万の人が動く近代戦争において高々数人が個人で頑張ったところで大勢に影響を与えられるわけでもなく、結局「がんばった現場の人」だけに焦点が当たって根本的解決に向かわないのだ。

また、MI5が唯一ファイルを作った男と著者は肯定的に捉えているようなのだが、単に日本のインテリジェンスは規模が小さく大した仕事をしていないとしてマークする価値もないと思われたのかは不明。国家間の戦争において1人しか重要視されていない状況の方が異常に見える。

これは現在のビジネスにおけるデータ分析が、現場の少数派だけで行われて結局無理解な経営者層に潰されて力を発揮できないのとまったく同じ構図だ。これではこと情報に関して学習はおろか反省もできない愚かな国であると思われても仕方あるまい。

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タグ:書籍 日本のインテリジェンス


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