データ分析とインテリジェンス

シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃

■書評・感想・・・人工知能やビックデータなどの得体のしれない言葉で誤魔化すのではなく、本質をアルゴリズム革命であると唱える点において一線を画す

実態のよくわからない「人工知能」に仕事が奪われるなどと無責任に煽ったり、「ビックデータ」のような定義が至極あいまいな言葉で煙に巻いてシステムを売り込むための宣伝文は数多いが、本書はそれらとは大きく違う立場をとっているということは次の1文でわかる。

「クラウド」「ビックデータ」「IoT」「フィンテック」「人工知能」といったバスワード(流行り言葉)が、実はすべて同じ現象から成り立っていることがわかるだろう。

ではその現象とは何か。著者は「アルゴリズム革命」であるという。すなわち

ソフトウェアのアルゴリズムによって人間の活動をキャプチャ(取り込み)し、トランスフォーム(変形)し、そのれをどれだけリプレイス(置き換え)できるか。あるいは、どれだけ人間の能力をオーグメント(拡張)できるか。それがアルゴリズム革命の本質なのである。

この意見に同意する。先のことはいざ知らず、当面の間起きる変化はコンピュータの性能向上により、処理できるデータが増えることで自動化が進む分野がどんどん広がっていく、ということだろう。

本文は第1章は今起きていることと、これからについての総論。第5章は日本企業はこれからどうするべきかについての提言があり、この2章で十分元は取れる。それと章の間にあるコラムではシリコンバレーにおける人材・VC・文化といった話題に触れられているがこのようなコラムにしておくのはもったいないので是非このテーマでもう1冊書いてもらいたいところだ。なお技術書ではなくアルゴリズムについて知りたい人向けではない。

中盤の第2章ではクラウド、第3章ではIoTとビックデータ、第4章ではフィンテックとこれらの章は個別テーマ。本文の多くはアメリカでの現状レポートなので、ほかの書籍や雑誌でも読めるし数年もすればあまり役に立たなくなるだろう。

あえて気になる点を上げれば、第1章において「ディープラーニングでAIが勝手に学び始めた」という『人工知能が金融を支配する日』でも見かけた記述がある。

最近AIの分野で注目を集める機械学習の分野、「ディープラーニング(深層学習)」は、最初のアルゴリズムこそ人間の手によってつくられるが、そこから先の学びはコンピュータが自力で学習していくので、これまでのアルゴリズム形成方法とは決定的に違う。

これについてはディープラーニングの学びのルールも最終的に何を目標とするかも人間が決めており、結局のところいままでのアルゴリズムの範疇を超えているわけではなく、コンピュータの処理能力の向上により以前よりも複雑なことができるようになった、という著者のいう「アルゴリズム革命」の範疇内であって、「コンピュータが自力で学習していく」というのは誤解ではなかろうか、と思うのだが、その理解が間違えているのだろうか。

その点はおいておくとしても、ちまたでよく見かける「ビックデータ・ビジネス」「IoT・ビジネス」「フィンテック・ビジネス」「人工知能・ビジネス」みたいなのを読んでもやもやした気分になるぐらいだったらこちらを読む方が遥かに良いのでは。

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タグ:書籍 人工知能 ビックデータ IoT フィンテック バスワード ディープラーニング


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