データ分析とインテリジェンス

データ・アナリティクス実践講座

■書評・感想・・・アナリティクスとはあるがアナリスト向けではなく、アナリティクス「プロジェクト」を動かすコンサルタント向けの概論。全体像を取り上げた点はとても良いが、これでできる気になられたら困る

「データ・アナリティクス実践講座」とはありますが、アナリストのためではなくアナリティクス「プロジェクト」を動かすコンサルタントやマネージャー向けの書籍です。書いているのがアクセンチュアなのでそういう視点になるのは当然かもしれませんが、題名はちょっとミスリード気味になっている感は否めません。

前半では簡単な統計知識、課題の定義と仮説立案、収集・加工、システムとデータ分析に関連する広い話題を扱っているのが特徴で、日本の書籍で全体像に触れている書籍は非常に少ないのでとても貴重です。一方でそのプロジェクトを成功させるための最も重要な要因である「経営者・マネージャーなど意思決定者の責任」に触れられていませんが、その方が仕事は取れるので仕方がないのでしょうか。

後半は手法についてですが、概略とサンプルデータの実行例、あとは説明ということで数式やアルゴリズムの詳しい出てきませんので、雰囲気は掴めるでしょうがきちんと理解できるかというとそれは難しいでしょう。アナリスト向けではなくコンサルタント向けであると最初に言ったのはこれが大きな要因で、それはいいか悪いかではなく役割の違いです。

読む際に注意すべき点としては、用意されたサンプルデータをRで実行すればそれなりに結果が出るのは当然なのですが、アナリスト業務の知識や経験がないコンサルタントがこれだけを見て「こんなに簡単にできるのか」などと考えてしまうと悲惨なことになります。というのも分析のための前処理にかかる膨大な時間や、たとえ分析できたとしても試行錯誤の繰り返しやその結果を読む大変さといった、実務上では一番手間と時間のかかる話にあまり力が入れられていないためで、データを用意してツールにかけたら結果が出ると勘違いしている人が安請け合いして炎上、なんてことになりかねません。

■これが日本企業における分析の実情

本書はアクセンチュアの現役コンサルタントの執筆ということで、様々な企業における経験を踏まえて実務でよく使われている手法が選ばれたと考えられますが、アソシエーション分析、クラスター分析、決定木、経路探索、協調フィルタリングとよく見る手法ばかり(ただし決して簡単ではありません)で、データ分析の専門家からしたら「まだこんなレベルか」と思うでしょうが、それが実情です。

むしろこのレベルでも日常的に使われていたらかなりレベルが高い企業で、いまだにクロス集計と作文を「分析」と言っている企業の方が多いでしょうし、それが突然劇的に変化することは考えられません。

そう考えると、この書籍はコンサルタントのためというよりは、アナリストがさらに視野を広げて仕事の質を向上させるため、あるいは分析のマネジメントにステップアップするために読む、というのがより良い使い方なのかもしれません。

このエントリーをはてなブックマークに追加

タグ:書籍 データ分析 キャリア


最新の書籍5件

実践 IBM SPSS Modeler~顧客価値を引き上げるアナリティクス
バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ - 海軍情報部の日露戦争
ゼロから作るDeep Learning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
敗北の理由 日本軍エリートはなぜ迷走したのか
DeNAのサイバーセキュリティ Mobageを守った男の戦いの記録

ブログトップ > データ・アナリティクス実践講座