データ分析とインテリジェンス

バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ - 海軍情報部の日露戦争

■書評・感想・・・日露戦争における数少ない日本のインテリジェンスの成功例。ただしその成功は英国なくしては成し遂げられることはなかった

日露戦争におけるハイライトと言えば陸では奉天会戦、海では日本海海戦だが、その日本海海戦までに日本がどのようにしてバルチック艦隊の居場所や艦隊編成などを掴もうとしたかをテーマ。というわけで派手な戦闘の描写は無く、むしろ地味な調査活動がメインではあるが、日本海海戦での勝利の一旦を確実に担っていたであろう情報活動に焦点が当たるのはめずらしく、また日本のインテリジェンスの成功例というさらに稀有な例を取り上げている。

舞台はバルチック艦隊の出立からヨーロッパ・インド洋・東南アジア・仏領インドシナ・上海と移り変わり、現地に駐在していたり調査に送り込まれた軍人、協力する日本人、雇われた外国人などがあの手この手で情報を集めながらその居場所を追いかけていく。信濃丸によるバルチック艦隊発見までにこれだけの努力があったことや、戦後のポーツマスだけではなくこんなところでも日英同盟の恩恵があったことは知らなかった。

取り組み方は『大本営参謀の情報戦記』で見えるような昭和のそれとは大分様子がちがう。上層部の積極的な関与で、第二次大戦中の情報活動に関する話題はほぼ現場の参謀レベルで司令官やましてや大本営はほとんど出てこないのに対して、日露戦争における情報活動では外相小村寿太郎を筆頭として各国領事や佐官級の軍人といったより高位な人の活動が目立つ。目標が単一かつ重大で分かりやすいと状況は違うとはいえ、この差は非常に大きい。真珠湾やマレー半島でもそれなりに成功していたように、やはり目標が明確でわかりやすければそれなりの活動はできるようではある。

とはいえ、日本のスパイ活動については「幼稚である」と評価されていたり、外務省の外交電報が読まれていたりとやはりこの成功は結局のところ英国がいなければ成し遂げられることはなかったのではないだろうか。

ところで本書、良書のわりにほとんど話題になっていないようだが、これはタイトルに「日露戦争」「インテリジェンス」「諜報」といった言葉が入っていないせいで発表されたことに気が付いていない人が多かったするのではないかと思われる。このまま埋もれさせるのはおしい一冊だ。

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タグ:書籍 日本のインテリジェンス 日露戦争


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