データ分析とインテリジェンス

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太平洋戦争裏面史 日米諜報戦

■書評・感想・・・日米戦の全体の流れを追いながら、日本の情報に対する意識の低さを知ることができる。

真珠湾、フィリピン・ガダルカナルなど南方の残留諜者、珊瑚海、ミッドウェー海戦、零戦の技術、ダンピール海峡の悲劇、山本五十六暗殺(海軍講事件)、海軍乙事件、台湾沖航空戦と題名に日米諜報戦とはあるけれども真珠湾を除けばあとは一方的に日本が情報で失敗し、やられる話。

暗号が解読されているにも関わらずその事実に思いもよらない、解読されているのではないかと指摘されても気が付かない、重要な情報を取られても問題にならない、あげく戦果を大きく見積もりすぎて判断を間違える・・・と、どうしてこんなにダメなのかというくらい失敗が続く。

情報が漏れることでどれだけの損害を得るかはロンドン軍縮会議における『ブラック・チェンバー』の件で学んだのかと思えばそうでもなかったらしく、情報教育にいたっては『大本営参謀の情報戦記』にあるように開戦後であってもまったくなかったというのだから頭を抱えるしかない。もちろん、その情報音痴ぶりは現代のビジネスにもしっかりと受け継がれており、いまだにデータ分析といえば専門家がマニアックなことをしているだけで自分には関係ないと考えるか、根拠はなくても作文とプレゼンで相手の聞きたいと願っていることを伝えることだと思っている人が大半で、本来の意味での分析に需要がほとんどないのはご存知の通り。

またデータ分析やインテリジェンスの話で日本と他国での決定的な違いは、日本側は暗号解読管や分析者は個人名が全然出てこないか出たとしてもごくわずかであり、それも大抵組織の末端で個人で頑張っておりたまに優秀な個人が出るとその時は局地的にはうまくいくが、組織化されず規模は小さいまま、その人がいなくなったら後には何も残らないというのがお決まりのパターンなうえ、さらにいうと上層部はほぼ例外なくまったく名前が出てこない。インテリジェンスの話で東条英機や寺内(南方軍司令官)、今村(第八方面軍司令官)が出てくるということはまずない。

これが他国になると、現場はもちろん軍や国家のトップクラスの名前が良く出てくるのが大きな違いで、この本でも情報に関わる人名がフリードマン、ロシュフォート、レイトン、ザカリアス、ウィロビーといった実務者から、ニミッツのような司令官クラスまでよく登場する(この本は日英戦はテーマ外なので出てこないが、イギリスが絡むとチャーチルがよく出てくる)。

これは能力差どころかもっと根本的な情報に対する意識があまりにも違う、ということがよくわかる構図で、これもまたビジネスにおけるデータ分析にも当てはまる。データ分析関連本をいくつか読めば気づくだろうが、アメリカの事例では経営者が出てくるのに対して日本の場合は経営者どころかマネージャークラスですらほとんど出てこない。つまり、こと情報に関していえばまったく進歩していないどころか退化しているのではないかとも思えるぐらいで、この傾向は当面変わらないだろう。見方を変えればいい機会ということでもあるのかもしれないが。

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タグ:書籍 日本のインテリジェンス アメリカのインテリジェンス

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