データ分析とインテリジェンス

敗北の理由 日本軍エリートはなぜ迷走したのか

■書評・感想・・・この本と『大本営参謀の情報戦記』を読んで絶望しない人だけがデータサイエンティスト・データアナリストを目指すべき

日本の情報軽視についてはたびたび触れているが、この書籍でも情報軽視によってどれだけの失敗が繰り広げられたかが延々と記述される。さらに加えてアメリカ側との違いをまざまざと見せつけられ、正直なところ読んでいてうんざりする。

情報無視の上層部、自分の願望で物事を考える司令官や作戦部の参謀、事実を報告してはののしられたり脅される情報担当者、外国の政権に近づきすぎていいように操られる外交官とよくもまあここまで失敗するものだという話が延々と続く。たまに成功例が出てくるがそれは相変わらず特定個人の頑張りであり、それが組織として生きることはない。

国家の命運をかけた総力戦だというのに情報を扱う部署は小さく、しかもまともに相手にされない。戦時中大和田通信隊の責任者である森川大佐の述懐では

「海軍で通信部門へ行くのは、たいてい出世街道からはずれた士官ばかりだった。なかでも暗号解読などを担当する特務班は俺のように若い時、結核をやった傍流中の傍流の来るところだった。電波で戦がやれるかと海軍の主流の連中は思っていたようだが、負ける時になって初めて、上層部は特務班のいうことを真剣に聞き出したよ」

というのだからどうにもならない。

悲しいことにこれが現実であり、数十年後の現代においてもビジネスの世界に話を持ち込めばそのままあてはまる。ということは、データサイエンティスト・データアナリストといったデータ分析職に(特に日本企業で)なろうとした場合にはこの「国のトップから一般人までの徹底的な情報軽視」という文化と戦うことが前提となる。

転職サイトには書いていないし、面接でも教えてくれないが、データ分析がうまくいかない理由の最たる理由はこの情報を軽視する文化であり、長期間にわたって培われてきた文化がそう簡単に変わるわけもない。興味であれ使命感であれ、この現実と立ち向かう理由がなければ早々に絶望して挫折するだけなので、本書と『大本営参謀の情報戦記』を読まずしてデータサイエンティスト・データアナリストを目指すのはやめておいたほうがよい。もちろん現在その職に就いている人や勉強中の人も今からでも遅くはない。今なら両方かっても1,000円そこそこだ。ついでに言えば、営業からのたたき上げは存在してもデータ分析職から出世した人を過分にして知らない。

『米海軍から見た太平洋戦争情報戦 ハワイ無線暗号解読機関長と太平洋艦隊情報参謀の活躍』もそうだが様々な書籍を要約して読みやすくまとめる形式(他の書籍は読んでいないので違うこともあるかもしれない)。まず本書で大まかに知り、より詳細が知りたくなったら個々の書籍を追うという使い方がよさそうだ。手元に置いておきたい本である。

このエントリーをはてなブックマークに追加

タグ:書籍 日本のインテリジェンス


最新の書籍5件

バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ - 海軍情報部の日露戦争
ゼロから作るDeep Learning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
DeNAのサイバーセキュリティ Mobageを守った男の戦いの記録
情報の捨て方-企業情報のための情報
シリコンバレー発 アルゴリズム革命の衝撃

ブログトップ > 敗北の理由 日本軍エリートはなぜ迷走したのか