データ分析とインテリジェンス

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私を通り過ぎたスパイたち

■書評・感想・・・リアルな「スパイ」の回想。しかし、現在に至ってもほとんどの問題はそのままになっているという恐ろしい現実。

戦後、まさに第一線の「スパイ・キャッチャー」であった著者の回想と、次の時代への提案です。「スパイ・キャッチャー」とは文字通りスパイを捕まえる側ですが、現場の個人のがんばりにだけ頼って国や組織的なバックアップが少ない無いなかでの苦闘が書かれます。さて、「スパイ」と言えば怪しいとかうさんくさいとか思った人も多いでしょうが、著者はこんなことを書いています。

日本で「諜報」とか「スパイ」などというと、敵地へ潜入して「情報」を盗み出す”悪いやつ”であり、破壊活動や暗殺などの非合法活動、ゲリラ活動に暗躍する”汚い仕事”だと思う人が多い。人を裏切ったり陥れたり、さらには殺したり、終始そんなことをしている怪しい連中だと思われがちだ。(中略)「インテリジェンス」を口に出せば、「陸軍中野学校の復活?」などと冷たい目で見られた時代が続いた。そもそも「陸軍中野学校」が破壊活動や暗殺ばかりやっていたわけではない。CIAとて同様だ。

今でもこの状況はあまり変わっていないのではないでしょうか。それとも、このような時代を生きてきた人から見たら、いくらかは改善しているのでしょうか。回想はゾルゲ事件、ラストロボス事件、コズロフ事件(宮永スパイ事件)と、1930年生まれの著者の主に現役時代の話なので大分話は古いのですが、スパイを捕まえても本人が驚くくらい軽い刑にしかならないという状況は今でもほとんど同じな気がします。

第四章までが昔の話なら、第五章では人材の育成や情報機関について簡単にですが現在の状況をまとめた上でこれからどうするべきかの提案が行われており、情報活動に興味がなかったとしても日本の問題としてはここだけでも是非読んでおきたいところ。第六章は主要なインテリジェンス、スパイ本が数多く(ざっと数えても100冊以上)紹介されています。これだけまとまってインテリジェンス・スパイ関連本が紹介されることはあまりないので、今後読む本を探す際には非常に有効でしょう。数少ないとはいえ数十年分も集めるとそれなりの数にはなります。

著者の佐々淳行はマスコミにもたびたび登場しているので見たことがある人は多いでしょうが、学者ではなくインテリジェンスの経験者としてその経験や、国家や情報活動について著作などで発表している数少ないうちの1人です。事情はよくわかりませんが、現役はもちろん元警察官や元自衛官など、情報に実際に携わった人の著作はあまりないため実態がわかりづらいので貴重ですが、もっと幅広い経験や年代の人からの発表も期待したいところです。

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タグ:書籍 スパイ

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