データ分析とインテリジェンス

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CIA流戦略情報読本 リアル=ワールド・インテリジェンスの世界

■書評・感想・・・ビジネスにおける情報活動を俯瞰できる隠れた名著。経営者・マネージャーは手元に置きたい一冊

「CIA流なんとか」というタイトルから、定期的に出版される少々うさんくさい書籍を想像してこの本も避けてしまうとしたら、それはとてつもない損失です。原書は『REAL・WORLD INTELLIGENCE』で著者も元CIA所属ということで興味を引くために邦訳の時にくっつけたのでしょうが、逆効果になっている気もします。

さて、本文は至って真面目な「ビジネスにおける戦略情報」について書かれている本です。150ページに満たないのですが、「インテリジェンスとは何か」から始まり、データ分析のプロセス(あるいはインテリジェンスサイクルと明記はされていませんが、内容は明らかにそうです)、組織と意思決定についてと、ビジネスにおけるデータ分析の活用について俯瞰されています。文章も学術的な固さはなく非常に読みやすいので手元においておき、都度目を通すのがよいでしょう。特に経営者・マネージャーはちまたでよく見かける「データ分析本」を10冊読むならばこの本をとにかく1度読んでみることをお勧めします。

1990年とすでに発売から4半世紀たっているものの、内容は現在でも十分に通用するもので、日本人の書いた書籍はまだまだこのレベルには達していないのが実情です。もっとも、近いうちに紹介しますがそのまたさらに20年前に出ている『マーケティングインテリジェンス―リサーチから情報管理システム確立へ』という書籍を読むと解るように、その遅れは50年どころではない、ということがよくわかります。まずその現実を認識しなければ問題になりようがないので、この書籍を紹介することが少しでも注意喚起になれば幸いです。

さて、本文からいくつかご紹介します。是非読んで欲しい文章がたくさんあるのでどれにしようか迷ったのですが、今回はその中から2つ選びました。

失敗するか成功するかの違いの一つは、どんなに多く知っているかではなくて、正しいことをどれだけ知っているかということにある。そして、知るべき正しいことを把握すること-これが特定の目的に到達するのを直接手助けする-は、世の中で最も扱いにくいうえに、最も理解されておらず、また最も軽視されている仕事の一つである。このような仕事に必要なものは、特定のテーマないし問題についての該博な専門知識ではなく、どんな要因が、その特定のテーマないし問題に影響を与えているのかを認識する能力なのである。この能力はそれ自体熟練、すなわちある特別な種類の専門知識である。一つの目的に到達するために知らなければならないことを、どのように決定すべきか知っている人なら、またほかの目的に達するために知るべきことも決定できるのである。

ここでは2つのことについて述べられています。まず前半は、データ分析、すなわちインテリジェンスの仕事が理解されず、軽視されるものであると語られます。データ分析が本質的に影の仕事である以上、この状況はどこであれさほど変わることはないでしょうが、大きな違いはこのこと認識しているかということで、残念ながら日本人による書籍ではこのようにデータ分析が本質的に目立たないものでありだからこそ経営者・マネージャーのバックアップが必要なのである、という視点が出てくることはほとんどありません。結局、任命すれど放置して見殺しになる、という事態を招きます。

後半は、データ分析の仕事に必要な能力についてです。「どんな要因が、その特定のテーマないし問題に影響を与えているのかを認識する能力」という一文はその能力の本質をついていると考えられますが、こちらも日本人の書籍では分析の手法やエンジニアリング、一方でコミュニケーションの話は出てきても、それらの道具を使って何をするべきかは語られることはまずありません。この1つの文章だけでも、データ分析、情報活用に対する我々との意識の違いがわかるでしょう。この書籍が発売されたのは25年以上前であるということを忘れないでください。

一人見つけ出し、彼または彼女をあなたのインテリジェンス部隊の責任者にせよ。政策決定者のあなたが知りたいことを何でも提供してくれることを保証する責任を彼または彼女に与えるとよい。あなたが信頼する大事な人間であることを明確にするとよい。あなたがこの人物を信頼することを政策決定参謀にもはっきりと知らせておくとよい。あなたとインテリジェンスの責任者との間には、誰もそして何事も介在させてはならない。

この中にはデータ分析、すなわちインテリジェンスを有効に活用するための教訓がいくつも含まれています。まずは「あなたが信頼する大事な人間であることを明確にするとよい」ということで、とりあえず分析担当者は任命はしておくけれども特に後ろ盾になるわけでもなく、ただいい情報を上げてくれればいいなと口をあけて待っているだけではうまくいきません。守ることも信頼もしてくれない相手に対して、時には首をかけて都合の悪い情報を上げてくれることは期待するべきではありません。

具体的な方法として「あなたがこの人物を信頼することを政策決定参謀にもはっきりと知らせておくとよい」ということです。政策決定参謀=経営企画スタッフですが、それだけに留まらず幹部クラスには伝えておいた方がよいです。そうしなければ、情報分析担当者が社内の情報を集めようとしても集められず、機能しなくなってしまいます。さらに「あなたとインテリジェンスの責任者との間には、誰もそして何事も介在させてはならない」と続きます。経営企画やマーケティングの所属にしてはいけません。必ず直接伝えることができるようにすること。間に誰かが入れば、必ずその人の立場や思惑が絡んで情報がゆがみます。

以上、2つほど紹介しましたが、まだまだ読むべきところは残っています。いずれ本文を引用しながら歴史と名著に学ぶデータ分析に加えられればと考えています(が、もうしばらく先になるかもしれません)。

繰り返しになりますが、この書籍を読むかどうかで特に経営者・マネージャークラスのデータ分析を活用する力に格段の差がでるでしょう。今ならamazonでも2,000円しないで買うことができます。2・3冊売れたら一気に価格が跳ね上がりますのでお早めにどうぞ(アフィリエイトではありませんので気軽にクリックしていただいて大丈夫です)。

■目次

  • 第1章 新しい経営革命が始まった
  • 第2章 インテリジェンスとは「組織化された情報」である
  • 第3章 インテリジェンスはどのように創造されるか
  • 第4章 インテリジェンス組織とはどのようなものか
  • 第5章 インテリジェンスと政策決定
  • 第6章 企業成功の秘訣

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